SolidEdgeでのギヤ(歯車)の作成方法
ギヤの種類
高専ロボコンなどで主に使うギヤの種類を以下に示す.
よく使うのは平歯車・ラック&ピニオン・かさ歯車なので,最低限これだけは覚えてあげてね.(写真で示したもの以外にも,やまば歯車,ハイポイドギヤ,ねじ歯車なんかがあるので,興味がある人は調べてみて)
歯車の特徴(読み飛ばしてもおk):
平歯車:一番よく使う.減速や加速,動力の伝達に使用.
かさ歯車:回転の向きを変えることができる.普通は90度.
ウォームギヤ:大きな減速比を得たい場合に使う.出力軸からの入力はできない(ロックされる).伝達効率が悪い.
ラック&ピニオン:回転運動→直線運動の変換もしくはその逆で使用.
はすば歯車:平歯車の遊び(がたつき)がなくなる優れもの.あまり使用しない.
計算方法
歯車には,「ピッチ円」という概念がある.ピッチ円とは歯車の基準となる直径のことである.歯車を設計する際,このピッチ円直径を直径とした円柱を考え,この円柱同士が接するように設置してあげる必要がある.
ピッチ円は,以下の式で計算することができる.
ピッチ円計算式
ピッチ円直径D = モジュールM × 歯数Z
モジュールとは,歯車の歯の大きさを示す単位のようなもので,高専ロボコンでは基本的に1~2を使用する.数字が大きければ歯も大きくなり,強度も向上する.しかし,歯車の「遊び」が大きくなる傾向にあるため,大きければ良いというものでもない.
以下の画像に,左から順にモジュール1から3のギヤを示す.歯数は全て30である.
ピッチ円直径を計算する演習
上の画像の歯車の,ピッチ円を計算してみましょう.回答はすぐ下. (1)モジュール1,歯数30のピッチ円直径 (2)モジュール22,歯数30のピッチ円直径 (3)モジュール3,歯数30のピッチ円直径
回答 (1) [モジュール]1 × 30[歯] = 30[mm] (2) [モジュール]2 × 30[歯] = 60[mm] (3) [モジュール]3 × 30[歯] = 90[mm]
演習で計算したように,歯数は同じでもモジュールが変わるとピッチ円直径もかなり変化することがわかる.
ラック&ピニオン
ラック&ピニオンの,ラックについて説明する.ラックは直線なのでピッチ円ではなく規準線がある.ラックは基準線を高さとした角柱として考え,その角柱にピニオン(歯車)が接触するよう設計する.
SE上で生成しそのまま印刷する場合は,生成されたラックの基準線を測ってからpartファイル内で調整し取り付けを行うと良い. 部室に転がっている青いフレキラックを使用する場合,モジュールによって基準高さが違うため注意すること.
ミスミでフレキラックを検索し,詳細情報の欄に移動する.
この画像の中の「かみ合い高さ」の欄がラックの基準となる高さになる.つまり,モジュール1であれば3.3,モジュール1.5であれば4.2の高さの角柱を考えればよい.
SEでの生成方法
実際にSolidEdgeで生成していく. まず,左上の「連結ウィンドウ」をクリックし,「Engeneering Reference」をクリックする.
Engeneering Referenceタブの中から,作りたい歯車をダブルクリックする.今回は,平歯車を生成する.
アセンブリが保存されていない場合,「アセンブリを保存してください」というメッセージが表示される.保存してから続行する.すると,以下のようなウィンドウが開かれるので,右下「オプション」をクリックする.
入力条件を「中心距離検出」に変更し,「OK」をクリックする.
パラメータの入力項目が変わったので,上で計算した内容を入力できるようになった. 今回はモジュール1,ギヤ1が歯数20,ギヤ2が歯数30の歯車を生成したいので,ギヤ比(直径の比)は1.5となる. SE上ではギヤ比(歯数比)は1以上でないと入力できない.そのため,計算のパラメータには小さい方のギヤの歯数を入力する.その後ギヤ比を入力すると,もう片方の歯数も見えるようになる. また,「取り付け穴径」がデフォルトで20mmとなっているので,変更する.現実的に可能な値であれば問題ないが,わからなければ4mmとでも入力しておく. そして,最後に「面幅」を変更する(しなくても良い).これは歯車の厚みである.後々変更するとPCが重くなって面倒な場合はこちらで変更しておく. 変更する項目をアンダーラインで示した.
その後,下の「計算」をクリックすると,下の画像のような画面に移行する.「作成」をクリックして作成する.が,だいたいの場合クリックできない.これは,SE上の要件を満たす強度を持っていないかららしい.「設計パラメータ」をクリックしてさっきの画面に戻る.
パラメータを調整しても良いが,毎回やるのは面倒なので,右下「材質」をクリック.赤丸で囲った部分の数値を全て9999に変更する.4か所変更できたら,OKをクリックして閉じる.
その後,もう一度「計算」を行い,「作成」を行う. ギヤを2個生成しているので二回ほど保存を求められるので,わかりやすい場所に保存する.
このようなギヤがアセンブリに生成された.ギヤのパーツファイルを開くと分かるが,「オーダード」になっているため編集がしづらい.これを「シンクロナス」で編集できるようにする.
まず,ギヤを右クリックしてパーツファイルで開く.
下の画像内の緑に光っている項目を選択する.「オーダード」と書かれている下の,「Base」をクリックした後,shiftを押しながら「パターン1」をクリックする.
その後,選択したものの上で右クリックして,「シンクロナスに移動」をクリックする.
さっきまで「オーダード」と書かれていた部分が「シンクロナス」となることがわかる.これで,歯車の種類をシンクロナスに変更することができた. 編集方法をシンクロナスにする.「ツール」タブをクリックする.
左上の「シンクロナス」をクリックする.これで,普通のパーツファイルと同じように編集することができるようになった.
Pcを重くしないために
ギヤの厚みを変更する際は,ギヤの面で突き出しを行うのではなく(画像左),横向きに領域を作ってから突き出しを行った方がPCは重くならない(画像右).
KHKのサイトを使った生成方法
小原歯車の計算サイトからギヤを設計する方法を解説する. まず,「KHK 歯車計算サイト」などと検索する.
開くとこのようなページに入るはず. こちらで,作りたい歯車をクリックする.例として,平歯車を選択する.ログインを求められるので,新規登録もしくはログインする.
このような画面になる.ここで,モジュールの横の「大きさ」欄と歯数を入力する.(SEと違って一個だけしか生成しないので,入力は一種類だけでよい)その後,「歯型計算」のタブをクリックする.
「DXF出力」をクリックしDXFを保存し,SEのドラフトで開く.SEで開く際はファイル→開く→参照で保存したファイルを開く,もしくはファイル→発見→学習 のページに行き,エクスプローラからドラッグ&ドロップする.
下の画像のような新規作成ページが出てくるので,「.dft」で終わるファイルをクリックする.(draft_mine.dftなどが望ましい)
このような図形を開くことができる.歯の形は,それぞれ入力した数値に基づいて生成されている.この曲線を円弧でなぞって,歯車の形にしていく.
「弧を三点で」というツールを使用し,なぞる.歯車のインボリュート曲線を完全になぞることはできないので,ほどほどに.
なぞり終わったものがこちら.わかりやすく色をシアンにしている.あまり線を増やすとPCの動作が重くなるので,今回は6本の円弧で近似した.
これを,「鏡映」ツールで線対象にコピーする.鏡映ツールをクリック.
「コピー」と書かれている横が青くなっているのを確認し,先ほどなぞった歯型を範囲選択する.そして,鏡映の基準となる二点をクリックする.今回は円の中心と,歯型の一番端を選ぶ.
歯型が一つだけできた。
この一つだけの歯型を,「円形パターン」でコピーする.「円形パターン」ツールをクリックする.
歯型を範囲選択で選択し,パターンの中心をクリック.歯車の中心となる部分をクリックしたら良い.その後「個数」で歯数を入力し,「角度」が360になっていることを確認する. できたら,完了をクリックもしくは何もない場所を右クリックする.
このような図形が書けた.
書けた図形を範囲選択し,「ctrl」+「c」でコピーする. 新規作成から新しいパーツファイルを作成し,「ctrl」+「v」でペーストする. 突き出しを行って,ギヤの作成完了.
Khkのサイトを使用するメリット
SEのギヤを作成する方法では,歯数が12以下のギヤは作成できない.そのため,6歯のギヤを作成したい場合に使用すると良い.\
Note
著者:Mio Saito